毎クール、連ドラの中で1作は必ず作られている刑事ドラマ。これまで数々の人気作、話題作が誕生してきた。この秋も刑事ドラマは健在。民放では4作が放送され、どれも個性派揃いだ。秋クールのドラマは視聴者がじっくり見る傾向があると言われているだけに、意欲的な内容のものばかり。各作品の魅力を深掘りしよう!

▽放送20年を迎えた長寿刑事ドラマ


©テレビ朝日

 
今年、放送開始から20年を迎え、刑事ドラマをけん引し続けているのが「相棒」(テレビ朝日系)だ。
今回でSeason18となり、刑事ドラマというとこの作品を思い浮かべる人も多いのでは? 天才的なひらめきを持ち、あまりにも切れ者ゆえ、警察組織で疎まれ、警視庁の窓際部署「特命係」に追いやられている杉下右京(水谷豊)と、彼とコンビを組むことになった刑事たちの事件簿は見ごたえ十分。国家権力の陰謀から、市井の人々が巻き起こす騒動まで、話に合わせてテイストが大きく異なり、飽きさせない作りとなっている。今クールは、右京が行方不明という設定でスタート。第1話ながら、主人公不在で話が展開できるのも長寿番組ゆえ可能なことだ。
このseason18は、作品自体にとっても“異例”の内容になっている。右京のパートナー・冠城亘(反町隆史)は4代目となり、今回で第5シーズンに突入した。実は初代を除き、右京の相棒役は第4シーズンで卒業してきた。亘も前作のseason17で番組を去るのではないか、との憶測が飛び交ったがパートナーを交代することなく今シーズンがスタート。亘はseason18も変わることなく右京の隣にいるのか? それともふたりの関係に何らかの変化が起きるのか? 本作は2クール放送されるだけに、右京と亘のコンビがどうなっていくのか最後まで目の離せない展開となるはずだ。
長い歴史を誇る作品だけに、右京を取り巻く人々にもいろいろと変化があるのも「相棒」の特徴。さまざまな人が右京たちの前に現れ、また去っていった。Season18でその動向をチェックしてほしい人物がいる。週刊誌の記者・風間楓子(芦名星)だ。これまで以上に「特命係」のふたりにコンタクトを取り、各エピソードでもなぜか彼女の名前がよく登場している。楓子の父親は裏社会に生きる人物で、彼女自身もなかなか肝の座った女性。「特命係」の敵か味方か? 存在感を増す楓子がseason18にとって何らかの役割を果たすはずだ。

【番組情報】
相棒Season18
毎週水 夜9:00~
テレビ朝日
出演者
水谷豊、反町隆史、川原和久、山中崇史、山西惇、浅利陽介、芦名星、神保悟志、杉本哲太、石坂浩二
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▽ユル~いけど実はミステリーとして複雑な刑事ドラマ


©テレビ朝日

 
テレ朝系ではもう一作、金曜ナイトドラマ枠で「時効警察はじめました」を放送中。「時効警察」(06年)、「帰ってきた時効警察」(07年)に続くシリーズで、12年ぶりの復活となった。趣味で時効を迎えた事件を調べる警察官・霧山修一朗(オダギリジョー)の活躍を描く本作。ユル~いテイストは以前のままだが、実はミステリーとして複雑な話が構築され、この第3弾では霧山をめぐり、同僚の三日月しずか(麻生久美子)と彩雲真空(吉岡里帆)が恋の火花を散らすのか、散らさないのかという展開も見え隠れしている。
金曜の夜、リラックスした気分で楽しめつつ、見ごたえは意外なほど重厚。それもこれも、本作の立ち上げから関わる映像クリエイターの三木聡に加え、映画監督の大九明子や今泉力哉、さらに売れっ子の脚本家・監督として知られる福田雄一も脚本で参加と、現代のトップを走るクリエイターが大挙して参加しているからこそ。「時効警察はじめました」は、どんな映像作品がイマドキなのか、知るのにうってつけな作品といえるかもしれない。

【番組情報】
時効警察 はじめました
毎週金 夜11:15~
テレビ朝日
出演者
オダギリジョー、麻生久美子、吉岡里帆、磯村勇斗、豊原功補、ふせえり、江口のりこ、緋田康人、内藤理沙、田中真琴、光石研、岩松了
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▽「今日から俺は‼」賀来賢人×「3年A組」制作陣が作る刑事ドラマ

「今日から俺は‼」、「3年A組‐今から皆さんは、人質です‐」、「あなたの番です」と話題のドラマを連発し、若者を中心に注目が高まっている日本テレビの日曜、午後10時30分の枠。この秋は「今日から俺は‼」の主演で一気にブレイクした賀来賢人が主演し、「3年A組」の制作陣が再集結した「ニッポンノワール‐刑事Yの反乱‐」を放送している。本作はまさにチャレンジ精神に満ちた作品。「3年A組」と世界観が繋がっており、両作に登場する人物が複数いる。劇中で起きる出来事も、「3年A組」の高校教師による生徒たちを人質にした教室籠城事件に続き、記憶を無くした刑事が同僚刑事を殺害した容疑にかけられ、そこからいまも未解決のままの「10億円強奪事件」の謎に迫るという壮大なもの。毎話ごとに新たな謎が発生し、見る者を混とんとした世界に誘う。視聴者が“ながら見”を好む昨今。「ニッポンノワール」のように、至るところに伏線が張られ、緊張感漂うテイストは見る者に、ある種の覚悟すら求める。それでもあえて、こういった作品を届けるスタッフたちの意欲を買いたい。展開もときに、視聴者の予想の“斜め上”を行くことが多く、SNSを中心に、様々な意見が飛び交っている。それも制作陣にとって想定内のことか? 「ニッポンノワール」というタイトルも「日本の悪」をもじっているのでは、と予想する声もあった。もしかしたら、視聴者を奔走するこの作品のスタッフたちこそ、「日本一悪い、ドラマ制作陣」かもしれない。

【番組情報】
ニッポンノワール-刑事Yの反乱-
毎週日 夜10:30~
日本テレビ
出演者
賀来賢人、広末涼子、井浦新、夏帆、工藤阿須加、立花恵理、佐久間由衣、栄信、田野井健、細田善彦、篠井英介、杉本哲太、笹野高史、北村一輝

 

▽「アンフェア」の原作者が脚本を担当する刑事ドラマ


第1話より ©テレビ東京

 
 「相棒」、「時効警察はじめました」、さらに「ニッポンノワール」がそれぞれに異なったおもしろさ、魅力を持ち合わせる中、刑事ドラマファンならぜひテレビ東京系の「金曜8時のドラマ 特命刑事 カクホの女2」を見逃さないでほしい。この作品には刑事ドラマの良さが詰まっているのだ。
 1話完結でいつから見ても楽しめる。名コンビが事件を解決。キャストが見ごたえのある演技を披露。シリーズものならでは安定感。注目の若手やドラマに引っ張りだこのキャストが出演。肩の凝らない作りながら、ところどころで気になる演出が!…と注目ポイントを挙げたらきりがないほど。そんな「特命刑事 カクホの女2」の魅力を改めて紹介していきたい。
 ストーリー自体はとてもシンプル。定年退職後、嘱託刑事になった北条百合子(名取裕子)と神奈川県警の横浜臨海署の副署長ながら、名ばかりで閑職に追いやられた三浦亜矢(麻生祐未)が手を組み、難事件の謎を解き明かす、というもの。18年の1月に放送された「特命刑事 カクホの女」の続編となり、現役バリバリの刑事だった亜矢が今シリーズで仕事を取り上げられているのも、前作で百合子と一緒に直属の上司の不正を暴き、ためらいなく逮捕したことが原因だった。
 朗らかな百合子も実は辛い過去の持ち主。かつて婚約者の刑事が謎多き殉職を遂げていたのだ。前作のラストで、百合子が厚い信頼を寄せていた同僚の参事・如月光太郎(高橋克典)こそ婚約者殺しの主犯格と判明。如月は婚約者の父親を殺害し、百合子も命を狙われるが、何とか逃げることに成功。一方で如月は警察の手をかいくぐり、姿を消してしまう。
 そんな衝撃的なラストに続編を望む声が多数寄せられ、スタートした「特命刑事 カクホの女2」。すでに第3話まで放送済みだが、今後一筋縄でいかない展開になりそうな匂いがプンプンなのだ。第1弾は如月を始め、登場人物たちがいくつもの顔を見せ、気が付けば分かりやすい勧善懲悪でなく、何が正義で何が悪なのか視聴者に問いかける作品へと昇華していた。この第2弾も、冷静に考えるとオヤ? と思う展開が散りばめられている。“昼あんどん”の署長・城田正樹(大東駿介)は第1話のラストで、百合子と如月のデータを思惑ありげに見つめていたかと思いきや、第3話でびっくりするほど仕事ができる人間だと分かる描写も。そんな彼がなぜ無能なふりをしているのか、これから物語に大きく絡んでくる予感に満ちている。鑑識課の竹宮圭介(加藤雅也)も、仕事そっちのけで家庭を大事にしていることをアピールしているが、重大な事件現場では他の者が見逃している証拠をしっかり見つけている。それに演じているのが加藤雅也という売れっ子だけに、ただのぼんくらな鑑識官なわけがない(笑)! このふたりの動向にぜひ注目してほしい。
さらに百合子が行方を追う如月も派手な事件を起こしながら、まったく居場所がわからないのが不思議なところ。如月は如月なりに理想とする“平和な国家”を作るべく暗躍しているが、百合子や亜矢の追跡をかわすその裏に協力者がいたら…。もし百合子たちの近くに如月の支援者がいたとしても、おかしくないだろう。
 毎話、百合子と亜矢のコントのような会話で始まりつつ、驚愕の展開を見せ、終盤は予想をはるかに超えるところに着地する本作。この作品の生みの親と言えるのが、オリジナルで脚本を手掛けている秦建日子だ。刑事ドラマ好きなら、秦の作品というだけでも「特命刑事 カクホの女」は気になる作品のはず。というもの、秦こそ篠原涼子がクールな女性刑事を演じ、大ヒットを飛ばした刑事ドラマ「アンフェア」シリーズの原作を担当した人物。今回も女性刑事を主人公にしているだけに、それだけでもおもしろさが保証されているのだ。


第3話より ©テレビ東京

 
 もう一つ、この作品のおもしろさを倍増させている理由がある。それは名取をはじめとするキャスト陣の好演。話自体は毎回、深い余韻を残すものとなっているが、名取と麻生の軽やかなやりとりのおかげで暗いまま終わることなく、どこかに救いや光を感じさせるのだ。一方で、これまで善人役やヒーロー役の多かった高橋が本格的な悪役に挑戦。静かなたたずまいに狂気やすごみを漂わせ、名取・麻生と高橋のコントラストが物語に陰影を与えるに一役買っている。
 他のキャストも気になるメンバーが揃っている。先に挙げた大東、加藤に加え、ベテラン刑事・浜口洋二役の正名僕蔵はいつもカリカリしているキャラクターにおかしみをにじませ、ドラマの良いアクセントになっている。正名といえば、大人気劇団「大人計画」の一員で、毎クールのように連ドラに出演している。どの作品でも「なんか気になる」という印象を残し、今クールは「おっさんずラブ‐in the sky‐」(テレビ朝日系)にも出演。両作でどんな演じ分けをしているのか、見比べるのも楽しいだろう。
 亜矢にいいように使われる若手刑事の黒木達也を演じる小野塚勇人も注目してほしいキャストのひとり。ベテラン勢の多い中、フレッシュな存在感がまぶしい彼。EXILEも所属する芸能事務所「LDH」の一員で、若い女性を中心に知名度や人気が急上昇中だ。いつブレイクしてもおかしくないだけに、先物買いが好きならば、いまのうちから目をつけておくことをおすすめしたい。


第2話より

 
 物語もキャストも見どころ満載の「特命刑事 カクホの女2」を始め、秋ドラはここからが中盤。まだまだ間に合うタイミングなので、各作品をチェックして、それぞれの魅力をぜひ“カクホ“してほしい。

【番組情報】
特命刑事カクホの女2
毎週金 夜8:00~
テレビ東京
出演者
名取裕子、麻生祐未、大東駿介、正真僕蔵、小野塚勇人、長谷川初範、高橋克典、加藤雅也
≫番組詳細はこちら
※この記事はauテレビでも掲載されました。
http://sp.tvez.jp/(スマートフォン向けサイトです)
この記事を書いた人
ウィルメディア編集部
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