ホラー作家・澤村伊智のデビュー作を実写化
衝撃作『渇き。』以来5年ぶりに中島哲也監督が手がけた新作『来る』。2018年12月7日に公開され、現在も全国の劇場で大ヒット上映中です。
『来る』の原作は、綾辻行人、貴志祐介、宮部みゆきから絶賛され「第22回日本ホラー小説大賞」の大賞に輝いた、澤村伊智のデビュー作『ぼぎわんが、来る』。「登場人物がおもしろかった」と中島哲也が実写化しました。
監督と初のタッグを組む岡田准一を主役に、黒木華、小松菜奈、松たか子、妻夫木聡らの主役級大物俳優たちが脇を固め、そのキャストの豪華さとさすがの演技力、表現力にも注目が集まっています。
妻夫木聡演じる「人気者」で「イクメン」な夫、田原秀樹。その妻である黒木華演じる香奈。物語は2人が結婚し子供を授かり、地方都市に見晴らしのいいマンションを購入する「幸せな新婚生活」からはじまります。結婚式ではたくさんの仲間に「祝福」され、マンションでは仲間たちを招いてホームパーティーを開き、娘が生まれると田原は育児ブログを開設してイクメンパパっぷりを全世界へと発信。やがてはカリスマイクメンパパとして、同世代のパパたちから一目置かれるようになりーー。
簡単に冒頭のあらすじだけなぞると、誰もが羨む絵に描いたような多幸感あふれる家族像そのもの。しかし観客たちは、「絵に描いた」幸せがまさに絵空事だということをジワリジワリと突きつけらることになります。
ホラー映画の域を超えた怪作
そんな新婚生活の中、田原の身の回りには怪異な現象が起こり始めます。まだ娘が香奈のお腹に身ごもったばかりの頃、職場に「知紗さんの件で」と伝言を残す謎の来訪者が。知紗とは妊娠した香奈が名づけたばかりの娘の名前。来訪者がなぜその名を知っていたのか、田原は戦慄を覚えます。さらに、来訪者の姿が見つからないまま、来訪者を取り次いだ後輩が身体を蝕まれ謎の死を遂げてしまう。
そうして2年ものあいだ田原はこのような怪奇な現象に悩まされ、ついに民俗学に詳しい旧友に相談。そして、旧友から岡田准一演じるオカルトフリーライターの野崎と、小松菜奈演じる、霊媒師の力を持つキャバ嬢・比嘉真琴を紹介され、ともに田原に迫り来る謎の存在へと立ち向かっていきます。
クライマックスでは、松たか子演じる国内一の霊媒師であり真琴の姉・琴子が、日本全国から八百万の神に仕える人々を召喚して、壮大な除霊をはじめます。スタートからラストまで、とにかく多くの人物が登場し、あまりにも多くの事象が起き、片時もスクリーンから目を離せない怒涛の展開に。特にラストの祈祷シーンのスケールの大きさ、そして霊媒師を演じる柴田理恵の怪演は日本映画史に残る名シーンではないでしょうか。
見終わると、この映画が単なる「ホラー」には収まりきれない怪作であることに気づくはずです。私たちにとって本当に怖いものとは?冒頭の「幸せな結婚生活」でふりまく妻夫木聡の虚ろな笑顔が、いつまでも脳裏から離れなくなります。
- 映画情報
- 映画『来る』
全国東宝系にて公開中
原作:澤村伊智『ぼぎわんが、来る』(角川ホラー文庫刊)
監督:中島哲也
脚本:中島哲也 岩井秀人 門間宣裕
出演:岡田准一 黒木華 小松菜奈
□□□青木崇高 柴田理恵 太賀 志田愛珠 蜷川みほ 伊集院光 石田えり
□□□松たか子 妻夫木聡
配給:東宝
映画『来る』ホームページ
©2018「来る」製作委員会
- この記事を書いた人
- 栗林 勝/編集者/1970年東京都生まれ。
専修大学英文科を卒業後、20年ほどアダルト・サブカル系出版社で、雑誌・書籍・ウェブ編集を経験。広く、浅く、安く、をモットーにうす〜く生きている。
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