大河ドラマ『青天を衝け』は、約500の企業を育て、約600の社会公共事業に関わった「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一を描いた物語。本作では栄一の幼少期から描かれるが、彼がつねに行動を共にしていたのが、従兄の渋沢喜作である。栄一より2歳上の幼なじみとして育ち、生涯の相棒となる人物。のちに第15代将軍・徳川慶喜の警護をする彰義隊(しょうぎたい)を結成することになる。喜作を演じるのは、2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』で高杉晋作を演じた高良健吾。幕末を描く大河ドラマに再び出演する今だからこそ感じる当時の若者への思いと、喜作を演じる楽しさなどについて聞いた。
 
「若いころの喜作と成長したときの喜作の差を出していきたい」
 

――渋沢喜作を演じると決まったときのお気持ちをお聞かせください。
僕は、渋沢栄一さんのことを詳しく知らなかったので、その従兄である喜作についてもまったく知りませんでした。ですからまず、渋沢栄一がどのような人物なのかを調べたのですが、これまでに多くの功績を残していることがわかり、とても驚きました。NHKで用意してくださった資料なども読み、とても興味深い人物だったので、今回、喜作を演じることができ、とてもうれしいです。
大河ドラマは、ひとりの人間を長い時間かけて演じることができるので、本当に楽しいです。以前出演した『花燃ゆ』では高杉晋作を演じ、今回は渋沢喜作を演じていますが、作品に登場した瞬間から徐々に自分が思う人物像に育てていけるところが大河ドラマの面白さだと思います。本作では喜作が15歳のときから演じているので、最初はキュートに見えたらいいなと思っていました。何者でもない素直でまっすぐな青年が国を思い、これからどのように変わっていくのか、若いころの喜作と成長したときの喜作の差を出していきたいです。
 

――喜作の魅力はどんなところにあると思いますか?
喜作はもちろん、栄一(吉沢亮)や長七郎(満島真之介)、平九郎(岡田健史)、惇忠(田辺誠一)など、血洗島にいる一族全員に対して感じるのは、とにかくまっすぐで国を思う力が強いということです。その熱量が全員の魅力なので、僕も演じていて気持ちがいいですね。

――栄一と喜作は生涯の相棒になるということですが、演じる際に意識していることはありますか?
栄一より喜作のほうが2歳年上なので“兄貴分”というイメージがあるかもしれませんが、僕はどちらが年上というのは考えず、ただの“兄弟分”だと思って演じています。逆に喜作が栄一に甘えているようなふしもあるので、そういった部分は意識しています。
栄一役の吉沢さんは正直な人で一緒にいて楽しいです。二人で話をしたのは、最初のころは“わちゃわちゃやろう”ということ。若くかわいらしい栄一と喜作が、これから徐々に国のために動くようになり、その姿が頼もしく感じたり、切なく感じることもあると思うので、最初はふざけるところは思い切りふざけようと話をしました。また、若いころの栄一や喜作は、国を思う気持ちや勢いはあるけれど、まだ行動が伴わないこともあり、言葉に重みがないので、ある種の軽さというか、説得力のなさを意識して演じました。栄一と喜作はどちらも直情型で、二人とも前へ突っ走ってしまうのですが、行く行くは二人の走る方向性が変わっていきます。二人が経験を積み、言葉に説得力を持ち、違う道を歩み始める変化を演じることが今からとても楽しみです。
 

――喜作を演じているからこそ感じる渋沢栄一の魅力はどんなところでしょうか。
『花燃ゆ』で高杉晋作を演じたからこそ感じることであり、今回、喜作を演じていても感じることなのですが、自分の信念を最後まで持って行動する美学や潔さがある幕末の志士たちは、志し半ばで命を落とすことが多いのではないかということです。けれど幕末を生き抜いた栄一は先の先を読んで、どうすればこの国がよくなるのか、それが誰のなめになるのかを見極める才能がありました。喜作はそんな栄一の側にいたからこそ生き延びることができたのだと思います。自分の心の真ん中にあるものを大切にしながらも、状況に応じて変化できる。でも変わったことが裏切りではなく、その行動の先には信じるものが続いている。そんな栄一の思いの強さにとても惹かれます。
 

――コロナ禍の今だからこそ、日本を変える人物を描く本作の意味があるように感じます。現代を生きる視聴者へメッセージをお願いいたします。
現代の日本では、自分が話をしても行動をしても状況は変わらないと思うことのほうが多いと思いますが、『青天を衝け』に出てくる人たちは今ほど情報を得られないのに、この国のためを思い、日本を変えようと行動します。その結果、いろいろなことが起きて、多くの命が奪われることになりました。でも、栄一たちのような若者が行動し、時代が変わっていく様を本作で描くことで、今、世の中に対してなにか我慢を強いられている多くの人たちにとっても、なにか励みになるのではないかと思います。

――ありがとうございました。

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