作品のコンセプトは“子供たちが活躍できる映画”。内気な小学6年生の男の子が好きな女の子のために、仲間を集めて自主映画を撮る姿をコミカルに描く。映画制作に夢中になる子どもたちを見守る教師・土方役の井上小百合と、主人公である陽太の兄・匠役で長妻怜央が共演。2人へのインタビューでは、子どもたちと過ごした撮影現場でのエピソードや作品の舞台となった埼玉県・入間市の魅力について聞いた。


「子どもたちとの共演にすごく刺激を受けました」(井上)
「弟とフランクに話せるような関係が理想です」(長妻)

――脚本を読んだ感想は?

井上「コロナ禍で若者たちが夢をあきらめざるを得なかったり、自由に過ごせる環境が少なくなってきているというニュースを見て胸を痛めている時に今回のお話をいただきました。次の世代を作っていく子どもたちが主体となってやりたいことをやったり、夢を追い掛けるということはすごく素敵なことだなと。この時期に参加する意味がある作品だなと思いました」

長妻「個人的なことになってしまうんですけど、お兄ちゃん役というのが自分にとっては新鮮でした。これまでは、どちらかというと年下の役が多かったんです。だから、しっかりとお兄ちゃんを演じることができるのかという不安もありました」

――井上さんは先生役、長妻さんはお兄さん役としてどんなふうに子どもたちと向き合っていましたか?

井上「土方先生は新米教師ということもあってドジをやらかしたり、間抜けな部分もあったりして。いつも教頭先生に怒られているような人物だから上から目線というよりは、子どもたちと距離が近い感じなのかなと。現場でもなるべく対等な立場で、しゃべる時も中腰になったり座ったりしながら子どもたちと目を合わせて話すことを心掛けていました」

長妻「僕の中のお兄ちゃんの理想像は、友達みたいな感じでフランクに話せる関係。例えば、共演者に後輩がいたら『タメ口でいいからね』って言うようにしているんです。敬語で会話していると何となく親しくなれない自分がいて。だから、僕が演じた匠の弟・陽太役の阿久津(慶人)くんにも『敬語を使わなくていいよ』って伝えました。現場では阿久津くんも普通に話し掛けてくれたので改めて弟という存在はいいなと思いましたし、弟が欲しくなりました(笑)」

――お互いの先生ぶり、お兄ちゃんぶりはいかがでしたか?

井上「私的にも理想のお兄ちゃんでした」

長妻「ありがとうございます(笑)。完成した作品を見て思ったのは、お兄ちゃんがいる人からしたら『こんなお兄ちゃんいないよ』って思われるんじゃないかなって」

井上「どういうところが?」

長妻「お兄ちゃんって弟に対して意地悪をしたり、言葉使いが荒かったりするんだろうなって。でも、匠と陽太は結構年が離れた兄弟という設定だったので、あれはあれでありなのかなと思ったりもします」

井上「すごく素敵な兄弟だなと思いました」

長妻「井上さんが演じた土方先生はちょっとおっちょこちょいなところがあって、先生も人間なんだなと感じられるところがいいなって。映画を通して、いろいろな経験をしてきたという人間像が表現されていて、学生の頃に見ていた先生とはまたちょっと違った先生の姿を見られたような気がします」

井上「ありがとうございます。子どもたちを通して、周りの大人たちも成長していく姿がもう一つのストーリーだなと思っていたんです。先生も親も一人の人間としてさまざまな葛藤を抱えているということを自然に表現できたらいいなと思っていたので、少しでも伝わっていたのならうれしいです」

――共演した子どもたちの印象は?

井上「最初はどうやって距離を縮めていこうかと考えていたんです。でも、撮影現場に入るとリハーサルの段階からセリフが全部入っていて自分の動きも把握している。周りの大人たちが『子どもたちを支えなければ』と思っていたことが申し訳ないぐらい。同じプロの俳優として一緒にお仕事をしてすごく刺激を受けました。撮影の合間はみんなでお弁当を食べたり、遊んだり。お芝居をしている時とは違う無邪気な一面を見ることができて楽しかったです」

長妻「僕は阿久津くんとのシーンが多かったんですけど、彼はクールな性格。ずっと僕が話し掛けている感じ。たまに言葉を発してくれるとすごくうれしかったです。そんな阿久津くんはゲームが大好きで負けず嫌い。僕に負けるとかなり悔しがっていました。僕も負けると結構悔しかったですけど(笑)。ゲームや遊びを通して仲良くなっていったのかなと思っています」

――劇中の子どもたちは映画作りに熱中していますが小学6年生の頃、お二人はどんなことに興味を持っていましたか?

井上「私は男兄弟の中で育ったので、常に男の子たちと一緒に外を駆け回って遊んでいました。服は汚すし、必ずどこかケガをして家に帰って来るので、母親に心配ばかりかけていた子どもだったという記憶があります。漫画も少年漫画ばかり読んでいて。時々、母親が部屋に置いてあった少年漫画を少女漫画にすり替えていたんですけど全然興味がなかったです。去年、たまたま思い出して『子どもの頃、漫画をすり替えていたよね』って母親に聞いたら『バレてた?』って言われました(笑)」
   
長妻「お母さん、かわいい(笑)」

井上「きっと、女の子らしい子どもに育って欲しかったんでしょうね」

長妻「僕は小5ぐらいからずっとバスケをやっていました。習い事としてやっていたので、遊びに夢中になっているとバスケの時間を忘れるんですよ。急いで帰ろうと焦りすぎて何かにぶつかってケガをしたこともありました。昔からスポーツは得意なんですけど、注意力が散漫なところがあって。通知表でもいい評価をもらうことが少なかったです。大人になった今も夢中になりすぎると周りが見えなくなることがあるので(笑)、気を付けたいと思います」

――物語の舞台である埼玉県・入間市は自然豊かな素敵な町でしたね。

井上「入間市は町全体がものすごく温かくて、市民の方たちがボランティアで草むしりをしてくださったおかげでロケ現場がきれいになりました。市長さんも映画に出演してくださったんです」

――どこのシーンですか?

井上「茶畑を自転車で爆走していた土方先生が転んだ時に『大丈夫ですか?』って優しく声をかけてくれた人が市長さんです」

長妻「あの人、市長さんだったんですか?」

井上「そう。あの役は市長さんが演じていたんです」

長妻「ずっと誰なんだろうって思っていました(笑)。入間市はすごくきれいな町という印象。公園でお弁当を食べていたらお婆さんが気さくに声をかけてくださって。楽しい時間を過ごすことができました。その公園の水辺にはカメが何匹もいて。こんな自然豊かな町で撮影ができてよかったなと思いました」

井上「いろいろな方たちに励まされたり支えられながら完成した作品なので、一人でも多くの方に見ていただけたらうれしいです」

長妻「将来子どもができたら入間市のような自然豊かで温かい人たちがたくさん住んでいる町で家族と楽しく過ごしたいので、映画を通して入間市の素晴らしさを知ってもらえたらいいなと思います」

映画情報
映画『ラストサマーウォーズ』
6月24日(金)ユナイテッド・シネマ入間にて先行ロードショー
7月1日(金)より全国順次ロードショー


©「ラストサマーウォーズ」製作委員会

©「ラストサマーウォーズ」製作委員会

©「ラストサマーウォーズ」製作委員会

  
あらすじ
小学6年生の内気な映画好き男子・陽太(阿久津慶人)は、同級生の女子・明日香(飯尾夢奏)にひそかに想いを寄せていた。そんな明日香が急に引っ越すことが決まり、動揺を隠せない。「そうだ、彼女をヒロインにした映画を作ろう!」と思い立ったものの、インキャな彼をサポートしてくれる友達はいない。映画好きな担任の土方(井上小百合)や陽太の兄・匠(長妻怜央)が相談にのってくれて、気づけば、ちょっとキャラ強めではあるけれど、愉快で才能に溢れた同級生5名が仲間になっていた。つまずきながらも、スマホアプリやSNSなど令和テクノロジーを駆使して撮影はすすんでいく。しかし子供だけでの撮影は危ないと親たちの妨害や事故が発生してしまい…。映画を完成させて、初恋の明日香を笑顔にすることはできるのだろうか?

出演
阿久津慶人、飯尾夢奏、羽鳥心彩、松浦理仁、小山春朋、上田帆乃佳
井上小百合、長妻怜央(7ORDER)/デビット伊東、櫻井淳子

監督・企画・編集
宮岡太郎

脚本
奥山雄太(ろりえ)

配給
「ラストサマーウォーズ」製作委員会

映画『ラストサマーウォーズ』

撮影:島村緑 取材・文:小池貴之

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