今回のテーマは公園です。
誰にも思い出の公園がいくつかあるのではないでしょうか。
私はなかでも思い出すのは就学前に良く遊んでいた公園です。
約5000平方メートル程度の公園にはタイヤを連ねた跳び箱があり、砂場、鉄橋のようなもの、ジャングルジム、ブランコ、そういった遊具があった事が思い出されます。公園の端にはそれらの遊具が一列に並び中央に大きなスペースが取られていました。思い切り遊べる広さです。この公園では、鬼ごっこも思い切りできるしキャッチボールはもちろんノックも可能。サッカーをするには少し広く幼少時代の私は息が切れてしまうほどでした。正月にはたこあげをし、プロゴルファー猿が放送されればゴルフをし、夏には花火も打ち上げました。パラシュート花火が醍醐味でしたね、当時は。走ってパラシュートを追いかけるのですが風にあおられ遠くに行ってしまうので手に入れられる事は稀でした。
家から徒歩50メートル程の場所に所在しておりましたので特に用もなく毎日公園に行くのですが、その公園にいく度に知り合いが増えました。当時昭和50年代半ばを過ぎた頃でしたからファミリーコンピューターもまだ発売される前でみんな家にいても暇でした。ですから外をぶらぶらしているのです。知り合ったばかりの子供の家に招待されるなんていうことが日常茶飯事でした。でも家に遊びにいっても何もなくてつまらないのですよね。それでまた公園に遊びに行く。時には迷子になり帰宅できないこともありました。その場合は道を走っている車に対して「迷子になったから家に連れて帰って欲しい。」とお願いしていましたが、必ず送ってくれたように記憶しています。このような事態に備えて予め電話番号と住所は暗記するよう両親から促されておりました。不用心でしたが良い時代です。
就学前には気付かなかったのですが、公園はいわゆる「学区」の境目にあり、2つの小学校に通う児童が利用できる位置にありました。私が通う事になった小学校とそれ以外の小学校、どちらの児童も遊んでいます。その構成は、1年生〜6年生までの男女で2つの小学校の児童。さらに私のような就学前の子供。初めて会う子供が多いのも今では良く理解できます。ですが、不思議な事にそんな構成なのにいつ遊びに行っても楽しいのです。公園には良い思い出ばかり。私は大人になり社会人になりましたが「その頃の公園が生み出していた社会性」を理解できるようになりました。

「公園は楽しいんだということ」

この概念をみんな大切にしているのかなと。だからケンカもするけれど最後には仲直りをして帰路に就くことができるし、わがままを通したいけれど周りの空気を読んで自ら相手にゆずることができたり。みんなで楽しめるための我慢なら子供達は進んで実行できるんですよね。ときにはリーダーが混乱を収める。早く走れない子供でも、何らかの特例をつくって遊べるようにルール変更をしてあげられる。小さな頃の私もいつも特例を作ってもらっていました。そういった優しさを下の子に自然と提供できるようになっていたり。とても良い成長機会となっているんじゃないでしょうか。
 

「リーダーシップが偶発的に起こるということ」

それぞれの立場で公園を楽しく維持していきたいのですから、いつでもリーダーシップが生まれやすい場所です。定番は高学年のリーダーがまとめ役。でも面白いことにリーダー不在時には中学年でも低学年でもその時々の勇気あるものがリーダーの一翼を担います。他校の小学生でもそれは同じ。夕方には「やっぱり今日も楽しかったなあ。」との思いを共有したいのです。たまにはリーダー役を買って出たものの周りの意見を集約できずにくやしい思いをするケースもあります。意見に乗れなかったものは、そういった状況を生んでしまった自らの行動を家に帰ればお風呂の中で反省するでしょう。だから次の機会には上手くやれるはずです。ひとつひとつが成長への道ですね。
 

「いつかは離れていくということ」

あんなに楽しかった公園ですが大きくなればそれぞれのタイミングで距離を取ることになっていきます。つい先月まで遊んでくれていたリーダーも自転車に乗り塾に通いだし毎日遊んだ親友も小学校の卒業を機に部活の道や学業の道へと舵を切ります。それぞれの前向きな理由です。そうすると残されたものは奮起し新たなリーダー役を務めつつ、いつかは自分も公園を離れることになることを理解していきます。
 
そして数年経ち、ある日偶然近くを通りがかった際に公園が楽しく維持されている様子を見るとさみしくも温かい気持ちになったりするものです。そしてようやく「やっぱり公園は自分のものではなかったなんだな」と当たり前の事実に気付きスッと腹落ちしてしまいます。これも社会性の学びですね。なんとも不思議です。

この記事を書いた人
沼田大輔/ディレクター/1977年東京都生まれ。
東洋美術学校卒業後の2000年からデザイナーとしての仕事をスタートし、現在では、企画からデザイン、ディレクション、マーケティング、システム設計に至るまで幅広い領域に対応しています。趣味は考え事。最近はSIMと音声検索に凝っています。

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