母を守るために嘘をつく家族

 
ある日突然、自らこの世を去った鈴木家の長男・浩一。そのショックで記憶を失ってしまった母のため、遺された父と長女は「海外で事業を始めた叔父の手伝いをするため、浩一はアルゼンチンへ旅立った」と一世一代の嘘をつく。母の笑顔を守るため、親戚たちを巻き込んでのアリバイ作りにいそしむ日々。
こうして母への嘘がばれないように奮闘する姿を、ユーモアと悲しみを交えて紡ぐ映画『鈴木家の嘘』。果たして家族は再生への道を歩めるだろうか。
父・鈴木幸男を演じるのは『大鹿村騒動記』『いつか読書する日』の岸部一徳。母の悠子役は原日出子。長男・浩一は『アウトレイジ』『沈黙-サイレンス-』など国内外で活躍する加瀬亮が演じている。ほかに『菊とギロチン』の木竜麻生が長女・富美役を瑞々しく演じ、岸本加世子、大森南朋ら日本を代表する演技派たちが脇を固めている。
長編デビュー作となる野尻克己監督は、『恋人たち』(橋口亮輔監督)、『舟を編む』(石井裕也監督)、『セトウツミ』(大森立嗣監督)などの、名匠たちの助監督を務めてきた経歴の持ち主。自らの経験をもとに脚本も担当し、家族の死という重厚なテーマを描きながらも、ユーモラスであたたかみのある喜劇に仕上げている。
浩一の死によって、家族だけど知らなかったこと、家族だから言えなかったこと、と初めて向き合う鈴木家の人々。それまで心を通わせることができなかった家族が、死を乗り越えようとすることで一つになって、あらたな絆を育んでいくーー。
昨年の東京国際映画祭で日本映画スプラッシュ作品賞を受賞した本作は、本当の家族の形とはなんだろうか、と観る者に優しく問いかける感動作だ。

 

映画情報
『鈴木家の嘘』
全国公開中
出演:岸部一徳 原日出子 木竜麻生 加瀬亮 岸本加世子 大森南朋
監督・脚本:野尻克己
撮影:中尾正人
照明:秋山恵二郎
録音:小川武
美術:渡辺大智/塚根潤
編集:早野亮
音楽・主題歌「点と線」:明星/Akeboshi(RoofTop Owl)
『鈴木家の嘘』公式ウェブサイト

©松竹ブロードキャスティング
 

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この記事を書いた人
栗林 勝/編集者/1970年東京都生まれ。
専修大学英文科を卒業後、20年ほどアダルト・サブカル系出版社で、雑誌・書籍・ウェブ編集を経験。広く、浅く、安く、をモットーにうす〜く生きている。
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