野々垣さんのお店を訪れたボクシングの村田諒太選手

 
YouTubeチャンネル「元PL学園ホーリーの野球日記」に登場したPL炒飯に、「PL焼飯メニューにしたらええのに」というコメントが残っている。最近SNSで話題のPL炒飯。PL学園野球部の厳しい寮生活のなかで、先輩から後輩へ受け継がれてきた伝統の味に密かに注目が集まっている。現役引退後に働いていた飲食店で実際にお客に提供していた、PL学園出身の野々垣武志がPL炒飯を振り返る——
 

 
PL学園卒業後に1989年西武ライオンズに入団してから引退するまで、一度も料理を作ったことがなかったのですが、現役引退後に飲食店で働くようになり、たまに賄いでPL炒飯を作るようになりました。
アスリートや会社経営者が多く訪れる鶏料理の名店でしたが、レシピを見ずに作れるのはPL炒飯くらいのものだったので、せめてお店の特徴にでもなれば…ということで最初は裏メニューとして作り始めました。
ところが、どうしたことかウケが良くてランチメニューに昇格しました。低カロリー高タンパクのヘルシーなメニューが多いなかで、強烈に高カロリーなPL炒飯はお店では異色の存在でした。
そしてついには週に1回「PLチャーハンの日」ができました。その日はお米をいつもよりたくさん炊き、PL学園時代とは違って具材もベーコンを使っていたので、自分で言うのも何ですが、とても美味しかったです。しかし、中華鍋をひたすら振っていたので左腕がパンパンになったのを覚えています。
このPL炒飯がきっかけで、よくお客と野球の話で盛り上がりました。東京の広尾というお洒落な場所で、多くの方がPL学園野球部のことを知っていることにも驚きました。


PL炒飯を食べる田渡凌選手(広島ドラゴンフライズ)。

 
PL炒飯との出会いは1987年に遡ります。
意気揚々と希望に満ち溢れてPL学園の門を叩き、地獄の寮生活を送りました。部屋子として付き人の先輩と衣食住をともにする生活。その中で、付き人の先輩から教えていただいた炒飯が伝統のあるものだとは、当時は深く考えたことはなかったです。
調味料は中華味、塩・コショウ、ガーリック、醤油。具材は卵と赤いウインナーが基本で、マルシンハンバーグ、豚肉、鮭、などを入れるバリエーションもありました。最大の特徴は油のかわりにマヨネーズを使うこと。これがPL炒飯最大の特徴です。
ある日、そのときがやってきました。
「野々垣チャーハン作ってくれ」という先輩からの声。「はい」とだけ返事して食堂に行きました。あらかじめキープしておいた卵と、売店で買っておいた赤ウインナーと調味料を用意。その前に、ご飯を冷やさないといけないと教わっていたのを思い出し、プラスチック製の船のような形の器に入れて20分ほど、冷蔵庫で冷やしました。中学時代は料理どころか包丁も握ったこともなく、ぎこちない手付きでウインナーを切り、卵を白丼に入れて溶き、冷やしておいたご飯を冷蔵庫から取り出して調理に取りかかりました。
フライパンにマヨネーズを敷いてから、赤ウインナーと卵を炒めて、ご飯を投入。中華味、塩・コショウ、ガーリック、最後に醤油で風味を付けて、船方の器に盛り付ける。美味しいか美味しくないかは別にして、見た目は普通に出来上がった記憶があります。寮の厳しい上下関係の中で気持ちにまったく余裕がなく、とにかく必死で作った人生初炒飯でした。
食べた先輩は「ありがとう」とひと言。ほかに感想はなかったので、味はイマイチだったのかもしれません。
このPL炒飯は、夏場の食欲がないときにマヨネーズの風味が食欲を増進させてくれて、激しい練習に疲れて痩せてしまうのを防いでくれる、野球部員には貴重な栄養源だったのです。


中央はサイン入りのPLボールだ。

 
PL炒飯は30年のときを経て、広尾の飲食店で復活したわけですが、お店の近所にあったコートヤードHIROOで行われる「FIRST FRIDAY」というイベントでは、違った形でデビューを果たします。
いつものPL炒飯を野球のボールくらいの大きさに丸めたおにぎりを、銀紙で包めば「PLボール」のできあがりです。
土地柄もあってこのイベントには健康思考の高いお客が集まります。そこへマヨネーズと炭水化物という最強カロリーの組み合わせは避けられるかなと最初は心配でした。ところが金曜日ということで皆さんチートデイの方やお酒の入った方が多くいたことで、PLボールは人気上々でした。「これなに?」と聞かれれば「PL学園野球部伝統の炒飯です」と答え、相手が男性の方だと決まって会話が弾みました。女性でも野球好きの方には興味を持っていただき、完売がずっと続きました。
食べたお客に味の感想を聞くと、マヨネーズの風味が食欲をそそり美味しいと言っていただきました。
それにしても野球部の高校生が寮で作っていた炒飯が、30年後に広尾という洒落た場所で売れたという事実に驚きました。歴代のPL学園の先輩たちが、よく考えてよく作られたメニューなんだと改めて思いました。肉体的にも精神的にもキツい環境の中で、食欲を増進させることを狙いとしたメニューで、PL学園野球部だからこそ生まれた味、という背景に歴史を感じました。
現在、YouTubeチャンネル「恋するスポーツ」でも何度かPL炒飯を作っております。失敗あり、マヨネーズ入れすぎありの、ハプニングだらけの動画ですが是非、ご覧ください。そして是非、作って食べていただければ幸いです(^^)。

文・野々垣武志(ののがき たけし)
1971年7月8日生まれ、奈良県桜井市出身。1989年にPL学園からドラフト外で西武ライオンズに入団。同期入団は、ドラフト1位の潮崎哲也、2位の鈴木哲、3位の大塚光二、4位の宮地克彦ら。主に内野手として6年間プレーし、1995年にトレードで広島東洋カープに移籍し、代打の切り札として活躍した。2001年からはダイエーホークスに2年間在籍。その後は台湾プロ野球の誠泰太陽に移籍し、14年間の現役生活に幕を下ろした。現在は野球指導者、YouTuberとして活躍している。

 
野々垣武志さん「こんなに米が跳ねるのはじめて」

 
桑田泉さん「冗談抜きでおいしい」

 
黒木隆司さん「マヨネーズ入れすぎちゃう?」

 
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