第32回でついに明治政府を辞めた渋沢栄一(吉沢亮)ですが、栄一が明治政府で活躍した頃から長く交流があったのが伊藤博文です。栄一との出会いのシーンや二人の会話はとてもテンポが良く、コミカルで印象的でした。初代内閣総理大臣に出世することでも知られる伊藤博文を演じたのは大河ドラマ初出演の山崎育三郎さんです。高校生のときに留学経験のある山崎さんが感じた役柄への思い、さらに吉沢亮さんとの意外な共通点などをお聞きしました。
 
「伊藤博文は僕が今まで演じたことがない、出会ったことがないような人」

――改めて、大河ドラマに出演してみていかがでしたか。
「昨年、連続テレビ小説『エール』で“朝ドラ”に初めて出演させていただき、すばらしい経験をしました。僕はミュージカル出身ですけれども、大河ドラマや“朝ドラ”に出演することはミュージカルでいうと帝国劇場の舞台に立つような憧れのステージだったので、今回『青天を衝け』に出演できたことは大きな喜びです。大河ドラマの撮影のスタジオは“朝ドラ”のスタジオの隣なので、NHKに入った瞬間、スタジオの匂いや空間に親しみがあるというか、ホームに帰ってきたような感情になりましたが、大河ドラマの現場はまったく空気が違ったので、最初はすごく緊張しました」

 
――伊藤博文の印象を教えてください。
「両親や祖父母には、“千円札の伊藤博文よ”と言われたのですが、僕は1986年生まれなので、1986年まで発行されていた伊藤博文さんが描かれた千円札にはあまり馴染みがないんです。写真を見ると髭をたくわえ、凛としていて一見こわそうな雰囲気がありますが、いろいろ調べていくと泥臭くて男っぽい人でありながら、コミュニケーション能力がものすごく高い人だとわかり、イメージしていた人物とは真逆なのではないかと思いました」

――実際に演じてみていかがでしたか?
「人と人との繋がりを大事にしていて、今でいうプロデューサーのような人なのかなと感じました。この人とこの人が出会ったらこうなるんじゃないかと客観的に見ることができる。彼がいることで話がまわり、話がまとまる瞬間が多くて、人の懐にスッと入っていくことがうまいんです。とても魅力的で、僕が今まで演じたことがない、出会ったことがないような人なので、面白いなぁと思いながら演じました」

 
――山崎さんは留学経験がありますが、伊藤博文との共通点を感じたことはありますか?
「僕は高校生のときに一年間アメリカに留学していたのですが、留学した地域が田舎だったので、2000人くらい学生がいるなか僕だけがアジア人という環境で、すごく孤独を感じました。伊藤博文さんが海外に行った当時は今よりもものすごいカルチャーショックを受けたと思いますし、伊藤さん自身に与えた影響もとても大きなものだったと思います。僕も留学したことで性格がずいぶん変わったので、伊藤博文さんを演じるうえで、留学した経験というのは少なからずリンクできたことはあるのかなと思っています。ただ、伊藤博文の初登場シーンのセリフはすべて英語で、しかも単語の一つひとつがものすごく難しかったので、芝居している感覚がなくなるくらい苦労しました」

 
――長州ことばも大変だったのではないでしょうか。
「イントネーションがとても難しかったですね。僕はメロディーのように音を捉えることが得意なのですが、長州ことばはいろいろな音が混ざりあっているので、ひとつの音が違うだけで長州ことばに聞こえなくなってしまうんです。だから絶対に音を外さないようにすることは気をつけていました」

――伊藤が見た栄一の印象をどのように捉えていましたか。
「伊藤は情に厚い人物ですが、イギリス公使館焼き打ちをするなど、攻撃的な部分も持っていました。栄一と初対面のシーンでは、栄一自身もそういう経験を持っていることを知り、同じ匂い、同じ魂を持っているのではないかと思い、彼とだったら国を変えていけるんじゃないかと感じたのではないでしょうか。栄一を演じる吉沢くんとはだいぶ前に映画で共演したことがあって、若くてキレイな青年という印象でした。今回、僕は途中からの参加で久しぶりにお会いしましたが、現場ではもう渋沢栄一にしか見えなかったです。吉沢くんは根性があって、男くさいところがあるので、渋沢栄一に近いものを持っているんじゃないかと思います。実は僕も吉沢くんも男4人兄弟で育っているので、男っぽさというところが共通しているのかなと(笑)。話をしていても年下ではあるんですけど、相性が合うと思っています」

――ありがとうございました。
 
大河ドラマ『青天を衝け』(番組公式ページ)

ログインする

詳細をお忘れですか?