夏目漱石にも影響を与えたネコ画家、ルイス・ウェイン。彼を守り続けた妻と猫との愛の物語。

英国名優たちの華麗なる共演。観る者を無限の優しさと温かさで包む感動作『ルイス・ウェイン生涯愛した妻とネコ』

19世紀末から20世紀にかけて、イギリスで知らない者はいなかった、大人気イラストレーター、ルイス・ウェイン。当時、ネズミの退治役として軽く見られるか、不吉な存在として恐れられていた猫の魅力を最初に“発見”した、“ネコ画家”だ。不朽の名作「吾輩は猫である」に登場する、絵葉書の作者だとも言われている。日本が誇る文豪・夏目漱石にインスピレーションを与え、SFの巨匠H・G・ウェルズからも、「ルイス・ウェインは独自の猫を発明した」と絶賛された稀代のアーティストだ。
ルイス・ウェインという人物に心当たりはなくとも、彼の名前で検索して出てきた絵に「あぁ！」と思う人は多いだろう。擬人化された猫は愛らしくてコミカル、唯一無二の生き生きとしたタッチで、今にも絵から飛び出してきそうだ。そんな素晴らしい絵を残したルイス・ウェインとは、どんな人物だったのか。猫を描き始めたきっかけと理由とは。そこには、周囲からの大反対のなかで結婚し、わずか3年後にこの世を去ってからも、その愛で夫を生涯守り続けた妻エミリーと、親友であり人生の師でもある猫のピーターとの物語があった。

イギリスの上流階級に生まれたルイス・ウェインは、父亡きあと一家を支えるために、ロンドンニュース紙でイラストレーターとして活躍する。やがて、妹の家庭教師エミリーと恋におちたルイスは、身分違いだと大反対する周囲の声を押し切り結婚するが、まもなくエミリーは末期ガンを宣告される。庭に迷い込んだ子猫にピーターと名付け、エミリーのために彼の絵を描き始めるルイス。深い絆で結ばれた“3人”は、残された一日一日を慈しむように大切に過ごしてゆくが、ついにエミリーがこの世を去る日が訪れる。ルイスはピーターを心の友とし、猫の絵を猛然と描き続け大成功を手にする。しかし、好調な日々は長く続かない。波乱万丈な人生の中で生きるルイスは、「どんなに悲しくても描き続けて」というエミリーの言葉の本当の意味を知る──。

ルイス・ウェインには、『イミテーション・ゲーム／エニグマと天才数学者の秘密』と『パワー・オブ・ザ・ドッグ』でアカデミー賞®にノミネートされたベネディクト・カンバーバッチ。幾人もの“天才”を万華鏡のように多彩に演じてきたカンバーバッチが、不器用でピュアな愛を貫くイノセントかつお茶目な天才という、彼の魅力を最大限に活かす実在の人物に挑む。
ルイスの妻のエミリーには、『ファースト・マン』でゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、TVシリーズ「ザ・クラウン」のエリザベス2世役で高い人気を獲得したクレア・フォイ。一人ぼっちになる夫を励ます笑顔と、書き留めたくなる台詞の数々が魂に響く。
もう一人の主役にしてヒーローの“ピーター”を演じるのは、年齢に応じた3匹の猫。なかでもリハーサル中もずっとカンバーバッチの側にいたフェリックスが、CG一切なしの名演で猫好きの目をくぎづける。
監督は、俳優としても活躍して英国アカデミー賞に輝き、監督としても同賞にノミネートされ、その才能が注目されている日系英国人のウィル・シャープ。英国貴族のエレガントな衣装を手掛けたのは、アカデミー賞®に3度ノミネートされ、『ある公爵夫人の生涯』で受賞したマイケル・オコナー。

この映画を、たんなる猫映画として見に行くと良い意味で裏切られるだろう。ルイス達の愛猫であるピーターを筆頭にたくさんの可愛い猫達が出てくるが、本筋はルイスの物語だ。決して順風満帆ではない彼の人生の中で、妻と猫への愛がどれだけ大きなものだったか…。その重厚なストーリーは、見る者を圧倒するだろう。物語に引き込まれながらも猫の可愛さに癒やされる素晴らしい映画だ。なお犬も少しだけ出てくる。この犬もとても可愛く、本作の注目ポイントともいえるだろう。

たとえ命が尽きても、愛は残された者と共に生き続ける…。その美しくも貴い真実を観る者に信じさせてくれる、優しく温かな愛の物語。

『ルイス・ウェイン生涯愛した妻とネコ』は12月1日（木）TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー。