偶然同じ日に母となった二人のシングルマザーがたどる数奇な運命の行方は?


(C)Remotamente Films AIE & El Deseo DASLU

 
自らの人生を投影した前作『ペイン・アンド・グローリー』で、引退同然の映画監督が再び創作に生きる力を取り戻すまでを描き、世界各国から絶賛されたペドロ・アルモドバル監督。待望の最新作では、ライフワークでもある母の物語に戻り、同じ日に母となった二人の女性の数奇な運命と不思議な絆、この困難な時代における生き方を描く。さらに、アルモドバル監督の中で年を重ねるごとに重要となっていったテーマ「スペイン内戦」も、彼らしいアプローチで人生のドラマの中に織り込み、深く広く多様な世界観を作り上げた。
ワールドプレミアとなったヴェネツィア国際映画祭の最優秀女優賞受賞、アカデミー賞®2部門ノミネートを始め、既に23受賞83ノミネート(2022.7.11時点)を果たした名匠の集大成にして新たな最高傑作が、ついに日本も魅了する。

フォトグラファーのジャニス(ペネロペ・クルス)と17歳のアナ(ミレナ・スミット)は、出産を控えて入院した病院で出会う。共に予想外の妊娠で、シングルマザーになることを決意していた二人は、同じ日に女の子を出産し、再会を誓い合って退院する。だが、ジャニスはセシリアと名付けた娘と対面した元恋人から、「自分の子供とは思えない」と告げられる。そして、ジャニスが踏み切ったDNAテストによって、セシリアが実の子ではないことが判明する。アナの娘と取り違えられたのではないかと疑ったジャニスだったが、激しい葛藤の末、この秘密を封印し、アナとの連絡を絶つことを選ぶ。それから1年後、アナと偶然に再会したジャニスは、アナの娘が亡くなったことを知らされる──。

主人公ジャニスを演じるのはペネロペ・クルス。本作では、答えの出ない問いを抱え続けるジャニスの複雑な心情を、揺れる眼差しで体現している。想定外の妊娠に戸惑う17歳のアナ役には、これが長編映画2作目の出演となるミレナ・スミット。無垢なアナを繊細に演じ切った。そして、「母性本能がない」と自称するアナの母親テレサ役に、『マシニスト』のアイタナ・サンチェス=ヒホン。アルモドバルファンにはおなじみのロッシ・デ・パルマも顔を出し、スクリーンに味わいを添えている。
ペネロペ・クルスが今回演じたジャニスというキャラクターについてペドロ・アルモドバル監督は、「緊張感やドラマがあり、これまでにないような主人公を描いた。ジャニスは、ペネロペが私の監督作やその他の作品で演じた中で最も難しい役であり、おそらく最も心を痛めた役だろう。結果として、彼女が演じる役はいつもそうだが、今回も本当に素晴らしいものだよ。」と語っている。

この映画は赤ん坊の取り違えを主軸としたシングルマザーの葛藤を描くものだが、それだけではない。戦争に翻弄された人たちの子孫の苦しみや悲しみも描写され、考えさせられる点が多い。もちろん、取り違えという秘密を抱えて日々を過ごすジャニスの生き方にも注目すべきだ。取り違えの発覚、アナとの再会、そして他人の子である最愛の娘・セシリアがどうなっていくのか…。この点は見逃せない。「取り違え」と「スペイン内戦」、この2つのテーマを上手く融合させた本作は、間違いなくアルモドバル監督の最高傑作と言えるだろう。

『パラレル・マザーズ』は11月3日(木・祝)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、新宿シネマカリテほか公開。

映画情報

脚本・監督:ペドロ・アルモドバル
出演:ペネロペ・クルス、ミレナ・スミット、イスラエル・エレハルデ、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノ

ログインする

詳細をお忘れですか?