『ウォーターボーイズ』『ハッピーフライト』で知られる矢口史靖監督の最新作『ダンスウィズミー』。催眠術をかけられたミュージカルが苦手なOLを、オリジナルストーリーと数々のヒット曲で描いたポップなミュージカル・コメディです。
主人公のOL・鈴木静香役には、約500名の中からオーディションで三吉彩花を抜擢。クランク・イン前に2ヶ月間の猛特訓を行い、吹き替えなしで歌とダンスを自ら演じ切っています。また静香の友人となる千絵と洋子役には、お笑い芸人のやしろ優とミュージシャンでモデルとしても活躍するchayを配役。2人の瑞々しい演技も注目です。
ここでは、三吉さん、やしろさん、chayさんの3者にインタビュー。お互いの印象と役への取り組み、そして作品への想いをお聞きしました!

ミュージカルは好き? キライ?

──オーディションに挑戦した時の心境は? 手応えは感じていましたか?
三吉 もともと歌とダンスは好きでしたけど、得意と言えるほどのレベルではなかったし、オーディションの最中も手応えらしきものは全く感じていませんでした。だから“500人の中からやっと見つけた!”と監督に言われても、私としては“どこが良くて選んでもらえたんだろう?”と不安しかなくて。クランク・インからしばらくしても、“本当に私でいいのかな?”という気持ちがずっと自分の中にありました。
chay オーディションでは“演技は初めてでわからないことだらけ。だけど歌だけはできるので聴いて下さい!”と言って弾き語りをしました。ただオーディションに受かっても、役が役だけに“本当に私に務まるのかな……”、という不安がずっとあって。しかも新潟の女の子という設定だったので、新潟弁を話さなければならない。それも大きな課題でした。
やしろ とにかく自分にできることをやろうと思って、オーディションでは倖田來未さんのキューティーハニーを歌いました。“この頃はやりの女の子~”と歌って、くるっと振り向き監督を指差し“ハニーフラッシュ!”とポーズを決めて。監督はかなり引き気味で、“あぁ、はぁ……”という感じ。その瞬間、“これは絶対に落ちたな……”と思いましたね(笑)。
──もともとミュージカルは好きだった? もしくは静香のように苦手でしたか?
三吉 もともとミュージカルは好きで、ミュージカル映画や舞台もよく観ていたし、カラオケでもディズニー作品の曲を歌ったりしてました。いつかミュージカルに出てみたいという気持ちもあったけど、もし自分が舞台に立ったらと想像すると“台詞が飛んだらどうしよう”“キー外しちゃたらどうしよう”なんて考えてしまう。挑戦はしてみたいけど、同時に“私には向いてないのかもしれないな”って思っていたんです。
chay ミュージカル映画は観ますし、アンチ派ではないけれど、特別ミュージカルが好きだったという訳ではなくて。何より普段歌を歌っているので、そこに演技が入るという感覚がぴんと来なくて、自分とは縁遠い世界のものだと思っていたんです。でも今回この作品に出たことで、ミュージカルの概念が覆されて、素晴らしいものなんだなって思うようになりました。
やしろ ミュージカルといえば、ディズニー映画を小さい頃に観ていたくらい。あまりミュージカルを見慣れていないというのもあるけれど、“え、ここで急に歌う!?”みたいな違和感がやっぱりどこかにありました。でもこの映画に出会ってから、それって実はすごく自然なことなんだなと思えるようになって。鼻歌にしてもそうだけど、人って楽しくなると歌いたくなるもの。“そうだよね、歌って自然と出ちゃうよね!”と思うようになってからは、ミュージカルに対する意識もがらっと変わりましたね。

3人は似た者同士!?

──本作で初共演を果たしたみなさん。お互いの印象はいかがでしたか?
三吉 やしろさんとは稽古の時からずっと一緒で、打ち解けるのも早かったですね。最初は先輩だしあまりフランクに接したら失礼かなと考えていたけれど、やしろさんはそういう壁が一切なくて、“あぁ、甘えてもいいんだな”と思わせてくれるというか……。chayちゃんは、初めて会った時から“自分と似てるかも!”と思ってました。“ふわふわして女の子らしく見えるけど、でも中身は絶対に違うぞ”“私と同じでおじさんの匂いがするぞ”と(笑)。実際に蓋を開けたら、すごくさばさばしてて男っぽい。やしろさんもそうだけど、3人ともすごく似てて、距離感のバランスが丁度いいなって感じます。
chay それは私も思った!この3人、確かに似てるよね!初めて会った時からすごく話しやすかったし、素をさらけ出しやすかったです。
やしろ 休憩時間も常に一緒にいて、地方ロケの時は3人でよくイオンに遊びに行ったよね。2時間空くと“行っちゃう?”なんて言っては、3人で買い物したり、マッサージしたり、フードコートでご飯を食べたり。スタンプラリーがあったら相当貯まるぐらい、あちこちのイオンに繰り出してました(笑)。
chay プライベートでも3人で遊ぶようになって、やしろさんの家にお邪魔したり……。

 
やしろ この3人はグループラインがあって、“そろそろ会いませんか?”と連絡しては、今でもよく集まってるんです。
三吉 “そろそろ会いませんか?”の連絡が結構なスパンでくるよね(笑)。
やしろ そうそう、次回はバーベキューをしようという話をしてて。それも楽しみ!
──撮影中、特に大変だったシーン、手こずったシーンといえば?
三吉 北海道の駅前でチャイムにつられて静香が歌い出すシーン。“あ、歌っちゃった!”という一瞬の表情が上手く表現できなくて、監督に何度もダメ出しされました。監督は“何か違う”と言うけれど、私はどこが違うのかがわからない。“鼻にシワを寄せる感じが違う”、“まだちょっと違う”と繰り返してる内に、監督も“うーん、何が違うのかわからなくなってきた”と言い出して(笑)、結局20テイク以上撮り直しました。
やしろ 玉葱を食べるシーンは実際に生の玉葱を食べています。私としてはあのシーンが一番大変だろうなと思っていたけど、演技指導に来ていた催眠術師の先生に催眠をかけてもらったら、本当に甘く感じられて……。催眠術に助けられ、思いがけずあっさりクリアできちゃいました(笑)。
三吉 あの時は本気で食べてたよね!“りんごの味がするー!めちゃくちゃ甘いですー”と言い出して(笑)。やしろさんはきっと純粋。催眠術って誰でもかかる訳ではなくて、信じる人がかかりやすいらしいから。
chay 私が一番大変だったのは叫ぶシーン。本読みでなかなか上手く叫べずにいたら、監督が個人的に叫びレッスンをしてくださって。監督とスタッフさんが円になって、まず監督が“今日暑いんだよ!”と叫び、続いてスタッフさんが“冷やし中華食いたい!”と順々に感じたことを叫んでいって、最後に私が台詞を叫ぶというレッスンで、それから思い切って叫べるようになって自分でもびっくり!実際の撮影では、ここまで声を張ったことって人生であったかというくらい大声で叫んでいます。

役との共通点は……。

──撮影を振り返り、演技に挑戦した感想はいかがでしたか?
やしろ 私はもともとマネージャーから“この子、やしろにそっくりだから受けてみなよ!”と言われたのがオーディションに挑戦したきっかけだったので、千絵にはすごく共通する部分があるのを感じてました。その後監督が書かれた千絵の生い立ちを読んだら、やっぱり自分と似てるところがたくさんあって。だから役作りをしたというよりは、“私だったらこうする”ということをやってみたらオッケーになるということが多かったですね。彩花ちゃんと2人で踊るシーンなどは、監督から“やしろさんは振りを覚えなくていいから、もう自由に踊っちゃっていいから”と言われたりと(笑)、かなり自然体で演じさせていただいた気がします。
chay 私もやしろさんと一緒で、洋子の生い立ちを読んだら自分とすごく通じるものがあるのを感じました。監督は私の生い立ちなんてもちろん知らなかっただろうし、オーディションの限られた時間でそれを見抜いていたなんてすごいなって改めて驚かされて。初めてのお芝居でしたけど、私も監督から“そんなに演じようとしなくていいよ”と言われていたので、すごく演じやすかったです。
──ミュージカル映画初主演を果たした三吉さん。撮影を振り返って、今の心境はいかがですか?
三吉 主演というプレッシャーに加えて、歌わなければいけないし、踊らなければいけない。クランクインの前に2ヶ月くらい練習はしたけれど、要求されるハードルが高いので、やってもやっても全然足りない。本当に毎日大変で、話し出したらもう3時間くらい語れます(笑)。ただそれを乗り超えたことでメンタルも強くなったし、臨機応変に対応する力もすごく鍛えられたと思います。何よりこの3人のシーンが多かったので、そこは大きな救いでした。3人ともそれぞれ大きな課題に挑戦してて、みんな同じ不安を持っていたし、助け合えた。もし2人がいなければ、演じ切れなかったかもしれない。本当にいい経験をさせてもらいました。私にとってとても大切な、絶対に忘れられない作品になりました。

映画情報
タイトル
『ダンスウィズミー』
2019年8月16日全国公開


©2019映画「ダンスウィズミー」製作委員会

 
ストーリー
一流企業に勤める勝ち組OLの鈴木静香(三吉彩花)はミュージカルが苦手。ところがある日、ひょんなことから催眠術師のマーチン上田(宝田明)に催眠術をかけられ、音楽を聴くと歌い・踊り出すミュージカル体質に!携帯の着信音に駅の発車メロディ、テレビの音と、街中に溢れる音楽を耳にするたび自然と身体が動き出し、歌わずにはいられない。催眠術のせいで大切な会議はめちゃくちゃに、憧れの人とのデートも大失敗。催眠術を解くには、催眠術をかけたマーチン上田を探すしかない。静香はマーチン上田のアシスタントを務めていた斎藤千絵(やしろ優)、そして偶然知り合ったストリートミュージシャンの山本洋子(chay)と連れ立ち、マーチン上田を追って日本中を駆け巡るーー。
原作
矢口史靖
出演者
三吉彩花/やしろ優/chay/三浦貴大/ムロツヨシ/宝田明
監督
矢口史靖
脚本
矢口史靖
©2019映画「ダンスウィズミー」製作委員会

撮影:大槻 純一/取材・文:小野寺悦子

※この記事はauテレビでも掲載されました。
http://sp.tvez.jp/(スマートフォン向けサイトです)
この記事を書いた人
ウィルメディア編集部
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