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鎌倉幕府二代将軍・源頼家は病に倒れたものの、奇跡的に回復。しかし、頼家を取り巻く環境は一変しており、過酷な運命が待ち受けていました。頼家を演じるのは、大河ドラマ初出演の金子大地さん。苛立つ様子や表情、そのなかに見える不器用さはどのように作られていったのでしょうか。難しい役どころへの思いを撮影エピソード含め、お聞きしました。
 
「ただの暴君ではない頼家像ができたと思います」

――頼家の人物像をどのように捉えて演じていますか?
頼家はいずれ“鎌倉殿”になるというのが生まれたときから決まっていたので、がんばろう、父を超えよう、鎌倉を良くしていきたいという気持ちがすごく強かったと思います。ただ、あまりにも早い段階で“鎌倉殿”になったことで、周りの誰もが「あいつでいいのか」と思っている雰囲気を頼家自身が一番感じていたのではないかと思います。源頼朝という圧倒的なスターと比べられるなかで同じことをしたくはない。けれど周りから信用もされていないし頼られてもいないので、「それはやめたほうがいい」と言われると逆に反発してしまう。心も未熟ですし、どこか開き直りというか、諦めもあったのではないかと思います。欲まみれの大人たちが嫌で嫌で、ひとりのときはいろいろなことを考えていた頼家だと思うので、18歳で征夷大将軍になる重圧や不安、葛藤というものを少しでも見せることができたらいいなと思って演じました。


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――ひとりで蹴鞠(けまり/しゅうきく)の練習をしているシーンは印象的です。
僕が頼家という人物を知るきっかけになったシーンですね。大人たちに囲まれて誰を信用して誰を頼ったらいいのかわからない。頼家自身、本当に頭がパンクしそうになっていたので、蹴鞠で少しでも気持ちを紛らわせようとしていたのだと思います。父から蹴鞠を教わったことがないという理由もあったかもしれません。気づいてた方は少ないかもしれないのですが、頼家にも頼朝のように人に好かれるところがあったのではないかと思い、蹴鞠で北条時連(瀬戸康史)を褒めたシーンでは、芝居のなかにユーモアさのようなものを入れて演じました。


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――源頼朝役の大泉洋さんとのエピソードはありますか?
源頼朝が亡くなったあとのオンエアが終わった頃にお会いする機会があって、そのときに大泉さんに、「幽霊として出て、頼家にいろいろなことを助言したい」というようなことを言っていただきました(笑)。でも芝居の相談はとくにしていないです。頼家も頼朝に相談できなかったと思うので、僕も一人で考えるようにしていました。


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――頼家は小栗旬さん演じる北条義時をどのように見ていたと思いますか?
頼家にとって父とは言わないけれど、どこか兄のようにいつも支えてくれている存在だったと思います。ただ、信用しようと思う気持ちが強かったからこそ裏切られたときの絶望も深いと思うので、北条と義時に対しての怒りが一番強かったのではないでしょうか。
僕のなかで義時を演じる小栗さんの存在はすごく大きくて、ずっと僕優先で考えくださった小栗さんの優しさに本当に救われていました。リハーサルで「全然できなかったな」と思うことが多く、自信がなさそうにしているのが伝わったのか、小栗さんがご飯に連れていってくださったことがありました。「好きなようにやっていいよ。撮影のときに自分が満足できなくて言いにくいことがあれば、“もう一回今のカットやりませんか”って俺が言うから、なんでも言ってくれ」というようなことを言ってくださいました。すごくうれしくて、僕も自信を持って演じようと思えましたし、義時と二人のシーンではもっとぶつかっていこうと思いました。


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――母・政子(小池栄子)との関係性はとても複雑に見えます。第32回で政子を「お前」と言って指さすシーンは衝撃的でした。
母上とのシーンはそんなに多くなかったので、第32回はやっとちゃんとぶつかることができた大事なシーンでした。ただ、怒りや憎しみ、絶望、それだけでは言い難い重い悲しみがあったので心が削られましたね。頼家は政子にたくましい自分の姿を見せたい気持ちがありつつ、本当はもっと弱みを言いたかったのではないかと思います。でも母は北条の人なので距離もあったと思います。だからなのか、僕も小池さんとのシーンは毎回すごく緊張しました。母としての愛情も感じましたし、小池さんとは普通に話していましたが、頼家が感情を爆発させるシーンはあまり会話をしませんでした。小池さんもつらかったと思うし、僕自身もつらいシーンでした。


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――初めての大河ドラマで頼家という大役を演じて、役者として得たものはありますか?
リハーサルも不安でしたし、本番もこれでいいのかと思いながら演じていたのですが、頼家にすごく感情移入ができたので、この経験はかけがえのないものになりました。作品を作るうえでの一体感、座長・小栗さんのすごさ、熱量のある座組にいられたことが一番の幸せです。頼家は未熟な部分もあったと思いますが、一生懸命がんばる姿や不安、孤独のようなものを脚本の三谷幸喜さんが描いてくださったので、ただの暴君ではない頼家像ができたと思います。僕にとって頼家は大好きな人物です。

――ありがとうございました。
 

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