動かなくなった・ヤンのメモリには、家族の誰もが気付かなかった愛おしい思い出と、ある“秘密”が残されていた―。


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“テクノ”と呼ばれる人型ロボットが、一般家庭にまで普及した未来世界。茶葉の販売店を営むジェイク、妻のカイラ、中国系の幼い養女ミカは、慎ましくも幸せな日々を送っていた。しかしロボットのヤンが突然の故障で動かなくなり、ヤンを本当の兄のように慕っていたミカはふさぎ込んでしまう。修理の手段を模索するジェイクは、ヤンの体内に一日ごとに数秒間の動画を撮影できる特殊なパーツが組み込まれていることを発見。そのメモリバンクに保存された映像には、ジェイクの家族に向けられたヤンの温かな眼差し、そしてヤンがめぐり合った素性不明の若い女性の姿が記録されていた……。

監督・脚本は、前作『コロンバス』が世界中で話題となった映像作家コゴナダ。韓国系アメリカ人のコゴナダ監督は、長編第2作となる本作で気鋭のスタジオA24とタッグを組み、派手な視覚効果やスペクタクルに一切頼ることなく、唯一無二の未来的な世界観を構築した。さらにオリジナル・テーマ曲を坂本龍一に依頼し、岩井俊二監督作品『リリイ・シュシュのすべて』で多くの映画ファンの胸に刻まれた名曲「グライド」に、音楽を手掛けたAska Matsumiyaの美しいアレンジを加えて、Mitskiが歌う新バージョンで甦らせた。

キャストの顔ぶれも多様性に富んでいる。残された記録映像を手がかりにヤンのミステリアスな過去をたどっていく主人公ジェイクに扮するのは、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』での怪演も記憶に新しいコリン・ファレル。加えて、『ウィズアウト・リモース』のジョディ・ターナー=スミス、「アンブレラ・アカデミー」のジャスティン・H・ミン、2011年生まれの聡明な子役マレア・エマ・チャンドラウィジャヤが切なくも温かな“未来の家族”を体現している。そして『コロンバス』で主演を務めたヘイリー・ルー・リチャードソンが物語の鍵を握る謎めいた女性を演じる。

ポスタービジュアルには、家族三人とともに、人間と何ら変わりない外見ながら時が止まってしまったAIロボット・ヤンの姿が映る。交わらない視線はすれ違う家族の風景を思わせるが、ミカが優しくヤンの手を取り微笑みかける様子、その隣に添えられた「ありがとう、お兄ちゃん」というキャッチコピーが、かけがえのない絆で結ばれた関係性を想起させる。ヤンの体内に残された映像には何が映っているのか。そこに刻まれたヤンの記録、記憶は、いったい何を物語るのか。そしてAIに感情は宿るのか。

本作はミステリー要素を持ちながらも、遠くない未来に実現するであろう新しい家族の形について問いかけてくる。こんな未来が訪れた時、自分ならどう生きていくか。そんなことを頭の片隅で考えながら、静かで美しい映像と、魂を震わせる音楽に、どんどん引き込まれていってしまう。かつてない感動作を、ぜひ劇場で鑑賞してほしい。

『アフター・ヤン』は10月21日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかロードショー。

映画情報

監督・脚本・編集:コゴナダ
原作:アレクサンダー・ワインスタイン「Saying Goodbye to Yang 」(短編小説集「 Children of the New World 」所収)
音楽:Aska Matsumiya
オリジナル・テーマ:坂本龍一 フィーチャリング・ソング:「グライド」 Performed by Mitski, Written by 小林武史
出演:コリン・ファレル、ジョディ・ターナー=スミス、ジャスティン・H ・ミン、マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ、ヘイリー・ルー・リチャードソン

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