
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』では、聴覚や視覚に障がいのある方も楽しめるよう、鑑賞サポート公演として、2025年12月に舞台手話通訳付き公演を2回、音声ガイド付き公演を2回、実施している。
鑑賞サポート公演
舞台手話通訳付き公演
2025年12月3日(水) 午後5:30 開演
2025年12月7日(日) ひる12:15 開演
舞台手話通訳者:田中結夏(1幕)、江副悟史(2幕)
手話監修:砂田アトム(株式会社エンタメロード)
コーディネート:株式会社momocan、株式会社エンタメロード、となりのきのこ
音声ガイド付き公演
2025年12月14日(日) ひる12:15 開演
2025年12月27日(土) ひる12:15 開演
音声ガイド:日比麻音子(TBSアナウンサー)
音声ガイド作成:彩木香里
コーディネート:株式会社イヤホンガイド
舞台手話通訳付き公演について
舞台手話通訳付き公演では、ロビーや客席で手話通訳スタッフが案内し、場内アナウンスも手話通訳を実施。字幕機器の貸出や、筆談ボード、コミュニケーションボードの設置は通常の公演でも行っているが、手話通訳により、より分かりやすくスムーズな案内が可能となった。
本番は、舞台向かって左側の客席エリアで、通訳者がグリフィンドールのローブ姿で舞台手話通訳を行った。前回の舞台手話通訳付き公演の時よりも通訳者の位置を舞台に近づけることで、より舞台と手話通訳が同時に観やすくなり、作品の世界観を臨場感たっぷりに堪能する事が出来た。
カーテンコールではハリー・ポッター役の大貫勇輔が通訳者を紹介し、最後は出演者全員が手話で「ありがとうございました」と挨拶した。
舞台手話通訳は、前回の実施に続いて、今回も入念な準備を経て行われた。通常の通訳と異なり、台詞に加え、登場人物の性格やキャストの演技を反映させ、観客が感情移入できる表現の工夫が必要だ。複数人のシーンなど台詞を全て訳せない場合は、話している相手のセリフを受けているようなリアクションも取り入れる「ミラー通訳」という手法を使用している。さらに、役名についても、指文字だけでなく、ハリー・ポッターの額の傷の仕草などサインネーム(手話でのあだ名)を定めるなど、緻密な工夫がされている。
聴覚に障がいのあるお客様からは、「音声がわからなくても舞台を楽しめるなんて夢のような時間だった」「字幕だけでは伝えきれない豊かな表現力があることで、ろう者も一緒に舞台を楽しめる環境がありがたかった」「字幕機器を追っていると、どうしても舞台のセリフとタイミングがずれてしまう。でも、手話通訳があったおかげで、舞台で起きていることを他の観客と同じタイミングで理解できたし、魔法を見逃すこともなかった」などの感想が寄せらた。
舞台手話通訳者コメント
田中結夏(舞台手話通訳者・手話通訳士・俳優。これまでにミュージカル「SIX」、ミュージカル「アニー」等、20作品以上の舞台手話通訳を担う)
皆様の多大なお力添えのおかげで、前回5月の舞台手話通訳付き公演に引き続き今回2回目が迎えられましたこと、大変嬉しく思っております。本当にありがとうございます。
今回は、前回に比べて手話通訳者の位置が舞台に近くなったことに加え、手話通訳対象エリアも広くなりました。また、今回も通訳ペアである江副悟史さんや手話監修の砂田アトムさんと共に、より良い翻訳・表現を追求するため何度も検討を重ねました。
個人的に特にセリフのテンポやスピードが速い作品は、セリフを追って通訳することに必死になってしまいがちなのですが、そのテンポ感の中でも翻訳が慌ただしくならないように調整したり、それぞれのキャラクターを明確に立てられるようにする・・・というところが今回の課題でした。
舞台手話通訳をする際、作品やキャラクターの魅力をありのままお届けすることで、お客様に魔法の世界を心から楽しんでいただきたい、舞台を好きになっていただきたい・・・という気持ちが原動力なので、僭越ながら今回の公演がお客様のこれからの観劇体験に繋がる機会となっていたらとても嬉しいです。
今後ともより良い舞台手話通訳のかたちを追求しながら、お客様一人一人に合ったアクセシビリティを選べるような劇場が増えることを目指し、精一杯精進してまいります。
江副悟史(俳優。日本ろう者劇団代表。株式会社エンタメロード代表取締役)
今年5月に引き続き、第二弾として舞台手話通訳が付けられ、何より通訳の位置が前回より舞台に近くなりました。
キャスト・スタッフの方々に支えられ、また前回のお客様からの大好評をいただいたことで実施できたと思います。本当にありがとうございます。
今回も前回に引き続き、一つ一つの台詞を大事に確認し、感情と顔の表情、指の位置までこだわり丁寧に務めさせていただきました。
初めてご覧いただいた方、数回見に来ていただいてる方も、遠方からお越しになられた方もいらっしゃいました。本当に嬉しい限りです。第三弾も続けられるといいなと思います。
本当にありがとうございました。
音声ガイド付き公演について
音声ガイド付き公演では、事前に視覚に障がいのある方のアテンドについて学んだスタッフが案内を担当。劇場内の移動のサポートも行った。
対象席のお客様に対し、事前に舞台の概要や登場人物、用語を説明した資料を送付し、開演前、休憩中にはローブや杖など、一部の衣裳や小道具に触ってもらいながら作品への理解を深めていった。本番前には舞台上で、舞台の広さやセットについての説明会を実施。舞台上の立ち位置による聞こえ方の変化も事前に体験できる施策も実施された。
音声ガイドは、日比麻音子TBSアナウンサーが担当。対象席のお客様にはイヤホンの装着が促され、本番前に登場人物や用語の説明を、本番中には舞台上の状況やセットの説明がされた。
音声ガイド制作の彩木香里さんは「本作は台詞量が多く会話のテンポ、転換も早いため、音声ガイドの制作は容易ではありませんでした。説明すべきこと、逆に説明しすぎない方が良いことを演出意図を踏まえて話し合い、視覚に障がいのある方にも実際に聞いていただきながら検討を重ね、制作しました」とコメント。
お客様からは「見えないけれど、音声ガイドがあることによって状況が的確に表現されていてより深く理解することができた」「舞台説明会や触ることのできる展示があることによって、舞台をより身近に感じられた」などの感想が寄せられた。
12月27日(土)の音声ガイド付き公演でも、音声ガイド機器の貸出予約を行っている。音声ガイド機器のお貸出をご希望の方は、2025年12月27日(土) 12:15開演のチケットをご購入の上、イヤホンガイド(03-3542-0831)にお問い合わせください(※音声ガイド機器の数には限りがございます)。
音声ガイド担当者コメント
彩木香里(ナレーター・俳優・Audio Description writer/合同会社nubo代表、音声ガイド作成を担当)
音声ガイド制作にあたり、初めて作品に触れる方にも、原作や映像作品をすでにご存じの方にも、それぞれの楽しみ方ができる内容のバランスを大切にしました。呪文の後どうなったのか、舞台美術がどのように変化し、空間が少しずつ立体化していくのかを丁寧に言葉にすることを意識しました。本国版のオーディオディスクリプションを参考にしながら、日本での演出や上演環境に合わせた調整を重ね、構成をまとめていきました。今回の音声ガイドは「今」が完成形ではなく、これから先へと続いていくものだと思っています。キャストが変わっても対応できるよう、未来の音声ガイドのあり方について関係者の皆さんと話し合いながら制作できたことを、とても嬉しく思っています。舞台の音声ガイド
はこれからまだ進化していくと思います。音声ガイドが、観劇の中で自然に寄り添い、安心して聴いていただける存在になることを願っています。また、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』チームのみなさんの創作に向かう姿勢と熱量は非常に印象的で、その一員として関われたことを大変光栄に感じています。
日比麻音子TBSアナウンサー(音声ガイドを担当)
舞台応援大使として、音声ガイドを担当でき嬉しく思います。私にとって初めて魔法を体感したときの感動は今でも忘れられないほどの衝撃でした。そんな感動をひとりでも多くの方に味わっていただけるツールのひとつとして役立てれば、これほど嬉しいことはありません。原稿の作成から〈誰も見たことのない魔法の世界〉をどう表現できるのか一言一句にこだわり追及し、収録では「魔法体験のサポート」として声のトーンやスピードなども調整しながら心を込めて録音しました。完成した音声ガイドは、ハリーをはじめステージに集うすべてのエネルギーを宿
しているようです。
この作品は何度観ても・何度体感しても、新しい驚きに出会えるところが魅力のひとつです。すでにご覧になった方も音声ガイド付きで観る事で新たな発見があるかもしれません。どうぞ家族や友達、大切な人と一緒に魔法の世界へ遊びにいらしてください!
通常公演時の鑑賞サポートについて
鑑賞サポート公演以外の公演でも、下記の通り鑑賞サポートを実施している。
・字幕機器の貸出をしております。事前に問い合わせフォームよりお申し込みください。
・筆談ボード・コミュニケーションボードを設置しております。(チケットボックス、ロビーインフォメーション、公式ショップ、カフェ)
・各階にバリアフリートイレがございます。1階のバリアフリートイレはオストメイトに対応しております。
・ほじょ犬(盲導犬、聴導犬、介助犬など)を伴ってのご来場およびご観劇が可能です。事前にホリプロチケットセンター(03-3490-4949)までご連絡ください。
・車椅子をご利用の方もご来場いただけます。事前にSプラス席のチケットをお求めの上、ホリプロチケットセンター(03-3490-4949)までご連絡ください。
・台本の貸出を開場時間から開演時間まで行っております。
数に限りがございますので、事前に劇場(03-3589-2277)までご連絡ください。電話リレーサービスからの着信にも対応させていただきます。
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』について
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、小説「ハリー・ポッター」シリーズの作者であるJ.K.ローリングが、ジョン・ティファニー、ジャック・ソーンと共に舞台のために書き下ろした「ハリー・ポッター」シリーズ8作目の物語だ。小説の最終巻から19年後、父親になった37歳のハリー・ポッターとその息子・アルバスの関係を軸に描かれる新たな冒険物語は、世界中で多くの演劇賞を獲得し好評を博しており、国内でも第30回読売演劇大賞の選考委員特別賞、第48回菊田一夫演劇大賞を受賞するなど高い評価を獲得している。2022年に開幕した、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』日本公演は、ロングラン上演5年目を迎える来年2026年12月27日(日)をもって千秋楽を迎え、その幕を下ろすことが決定した。
- 公演概要
- 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』
[日程] 上演中〜2026年12月27日(日) [会場] TBS赤坂ACTシアター [上演時間] 3時間40分 ※休憩あり [主催] TBS ホリプロ ATG Entertainment [特別協賛] 東海東京フィナンシャル・グループ
With thanks to TOHO In association with John Gore Organization









