映画『廃用身』(C)映画 『廃用身』5月TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開 ©2025 N.R.E.

 

主演は、幅広い役柄をこなす変幻自在な演技力で、圧倒的な存在感を放つ実力派俳優染谷将太。医療の限界を超えたいと力強く訴え、理想を追い求めるあまり、合理性と狂気の危うい狭間へと踏み込んでいく主人公、医師・漆原糾(うるしはら・ただす)を怪演。
 
共演には、老齢期医療に革命を起こす可能性を感じ取り、漆原に本の出版を持ちかける編集者・矢倉俊太郎を、主演映画『逆火』(25)や主演ドラマ「小さい頃は、神様がいて」(25/CX)、連続テレビ小説「おむすび」(25/NHK)など話題作への出演がつづく北村有起哉。両脚と左腕の麻痺に苦しめられ、漆原の〈画期的な治療〉で人生を取り戻した岩上武一に、映画『首』(23)や大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(25/NHK)の出演など、名バイプレイヤーとして活躍する個性派俳優の六平直政。漆原を支える妻の漆原菊子に、『由宇子の天秤』(21)で注目され、『敵』(25)『宝島』(25)『国宝』(25)など幅広く活躍する瀧内公美。その他、廣末哲万、中村映里子、中井友望、吉岡睦雄らが脇を固める。
 

原作は外務省医務官を経て、現在も在宅訪問医として活躍する久坂部羊の小説デビュー作「廃用身」(幻冬舎文庫)。出版当時、そのあまりに強烈な設定から、「映像化、絶対不可能!」と世間で話題を呼んだ。
監督と脚本を務めるのは吉田光希。東京造形大学在学中より諏訪敦彦に師事し、塚本晋也作品での現場経験を経て、『家族X』(10)、『三つの光』(17)でベルリン国際映画祭をはじめとした多数の国際映画祭での評価を通じ、世界で注目を集めてきた。本作は、そんな𠮷田が学生時代に原作と出会って衝撃を受けて以来、20年にわたり温め続けてきた、渾身企画の映画化となる。

 


『廃用身』トークショー付き最速試写会
原作者久坂部羊×監督𠮷田光希登壇!
最速試写会 オフィシャルレポート

 

映画『廃用身』(C)映画 『廃用身』5月TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開 ©2025 N.R.E.

 

映画『廃用身』の公開があと1か月後に迫った4月15日、東京・神楽座にて試写会を開催。原作者の久坂部羊先生と映画の監督を務めた𠮷田光希が登壇し、原作の背景や映画化に至った経緯についてや、本作が内包するテーマについて語り合った。
 

本作の一般向け試写会を行うのは、この日が初めて。緊張した面持ちでステージに登場した吉田監督は「応募がなかったり、会場がガラガラだったらどうしようと思っていました」と率直な胸の内を明かしつつ、「いち早く作品を見たいと思ってくれた方々のおかげで今日を迎えられました」と感謝を述べた。
 

一方久坂部先生は、映像化のオファーが来た当初は「大丈夫かな……?」と不安の方が大きかったというが、「吉田監督の原作に対する思いが非常に深かったので、大変良い作品に仕上がったと思っています」と信頼を寄せた。
 

不安が大きかった理由は、原作の出版当時「映像化、絶対不可能!」との宣伝文句を付けられていたから。過激過ぎる作品として受け止められるのではないかと不安視していた久坂部先生だが、作品内に登場する印象的なシーンについて「ロケーションを含め、原作の持つ空気感が丁寧に再現されている」と評価した。
 

本作は、外務省医務官を経て、在宅訪問医として終末医療の最前線に立ち続けてきた久坂部先生自身の経験から生まれた物語。自身が勤めていた実在するクリニックをモデルにしており、訪問診療を通して目の当たりにした高齢者とその家族の関係性、そして日常の中に潜む危うさ。そうした現実の積み重ねが、本作の着想につながっているという。「理想的なケアの姿だけでなく、さまざまな事情を抱えた家族の在り方や、思いがけない事故の現実も含めて描いた」と語り、フィクションでありながらも現実に根差した物語であることを強調した。
 

吉田監督が本作と出会ったのは、大学生の頃。「読み終えたあと、心の置き所がなくなるような、宙吊りにされたような気分になりました」と振り返る。「誰かに答えを迫られているわけではないのに、“自分はどうすればいいのか”と考え続けてしまう」という、その独特の読後感に強く惹かれ「いつか映像化したい」と長年温め続けてきたと明かす。
 

その想いは、偶然の出会いをきっかけに実現。プロデューサーとの何気ない会話の中で、本作への関心が一致。「今作を制作するアークエンタテインメントの中でも、一度企画が持ち上がったことがあったそうで。無数にある小説の中で、やりたい作品が一致するというのはなかなかの奇跡」と、偶然が映画化を大きく前進させたと話した。
 

脚本づくりについては、久坂部先生から「自由に書いてほしい」と一任されたことも明かされた。久坂部先生は、原作と映像では表現方法が異なるからこそ「完成した作品から学ぶことも多い」と語り、これまでも基本的にノータッチの姿勢を貫いてきたという。
 

その言葉を受け、「自分の色に塗り替えるのではなく、原作から受け取ったものを大切にしたかった」と吉田監督。本作のテーマを「単純な是非にとどまらず、異人坂クリニックが社会の縮図のように見えたり、その中での同調圧力や、第三者が当事者の在り方を語ってしまう危うさなど、現代にも通じる奥行きがある」と解釈し、その問いを映画として提示することを意識したという。
 

映画『廃用身』(C)映画 『廃用身』5月TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開 ©2025 N.R.E.

 

それに対し、久坂部先生は「そうした側面が作品の中にしっかり表れていた」と太鼓判。本作を通じて「どんな医療にも光と影がある」ということを伝えたかったと言い、良い結果だけで終わるものではなく、予測できない現実や、その先にある葛藤まで含めて描くことこそが意図だったそう。「この映画の中にもそれが出ていたので、私はとても満足です」と映画が申し分ない仕上がりになっていると保証した。
 

また、染谷将太さん演じる主人公・漆原のキャラクター造形についても話が及び、久坂部先生は「善意を持って行動する誠実な人物であるがゆえに、その選択が極端な方向へと進んでいく」と語る。その複雑さが作品の核になってくるのだが、そうした難役を体現した主演の染谷将太については「イメージにピッタリ」と高く評価。善意と葛藤のあいだで揺れ動く繊細な人物像を、説得力をもって表現していたことに触れ、「まさに書きたかった人物像がそのまま描かれていた」と称賛した。
 

医療現場の描写についても、久坂部先生は「100点満点」と高得点を付ける。それもそのはずで、専門家による監修に加え、実務経験を持つ俳優の起用など、細部までリアリティにこだわった制作体制を組んだと吉田監督は明かす。手術シーンの演出についても言及があり、現場の高揚感を表現する工夫を音楽面に施したと話した。
 

イベントの最後には、改めてそれぞれが作品への思いを語る。久坂部先生は「改めてこの作品を観て、本当に満足感でいっぱいです」と手応えをにじませ、「ぜひこの感想を周りの方にも伝えて、多くの人に作品を観ていただきたい」と呼びかける。
 

続く吉田監督は、本作で描かれる介護や高齢化社会といったテーマに触れつつも、「問題意識を押し付けたいわけではない」と強調。「“面白い”という言葉が適切かは難しいが、まずは映画体験としてしっかり成立する作品にしたかった」とあくまで“映画”としての手応えを大切にしたことを明かし、そのうえで「すぐに言葉にするのが難しい作品かもしれませんが、それでいいと思います。それぞれが感じたものを持ち帰ってもらえたら」と観客に委ねる姿勢を見せていた。

 

映画『廃用身』(C)映画 『廃用身』5月TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開 ©2025 N.R.E.
STORY
ある町のデイケア「異人坂クリニック」に通うお年寄りの間で、漆原院長(染谷将太)が考案した“画期的な”治療が密かに広まっている。究極のコスパの良い介護を目指すその医療行為は、<廃用身」>(麻痺などにより、回復見込みがない手足のこと)をめぐる、従来の常識を覆すものだという。その結果、「身体も心も軽くなった」、「厳しい性格が柔らかくなった」などと予想外の“好ましい副作用”が現れたという。噂を聞きつけた編集者・矢倉は、老齢期医療に革命を起こす可能性を感じ取り、漆原に本の出版を持ちかける。しかしやがて、デイケアに関するとある内部告発が週刊誌に流出。さらに、患者宅で起きた衝撃の事件をきっかけに、すべてが暗転していくーー。

 

作品情報
映画『廃用身』

原作:久坂部羊『廃用身』(幻冬舎文庫)  監督・脚本:𠮷田光希 
出演:染谷将太 / 北村有起哉 瀧内公美 / 廣末哲万 中村映里子 中井友望 吉岡睦雄 / 六平直政
音楽:世武裕子
配給:アークエンタテインメント 
©2025 N.R.E.
公式サイト
公式 X @Haiyoshin_movie

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