東海大関係校のなかで東海大高輪台だけが甲子園未経験という悔しさ

 
夏の甲子園出場に向けて、各都道府県で地方大会が始まっている。ケーブルテレビなどが全試合放送するなど、甲子園だけでなく地方大会も注目され、高校野球人気は年々高まっている。
そんななか、高校野球にまつわる「悲願校」という言葉が話題になっている。これは本書を執筆した田澤健一郎氏による造語で、いつまでたっても甲子園に出場できない強豪校、のことだという。
もう少し詳しく説明すると、
・甲子園出場の一歩手前で何度も敗退
・秋と春は強いのに甲子園がかかる夏になると弱い
・都道府県内では実績があるのになぜか甲子園とは縁がない
といった甲子園出場が悲願となっている高校のことだ。
本書は、こうした全国各地の悲願校に注目し、それら野球部の歴史や因縁、戦力分析やチームの方針、今後の展望にまで言及している。
強豪校が揃う神奈川県では、横浜創学館を取り上げている。横浜創学館は、東海大相模、横浜、桐蔭学園、日大藤沢、慶應義塾といった強豪校を相手に、1944年から昨年までにベスト8以上に11回も食い込んでいる実力校。
しかも、秋山翔吾(西武)、望月惇志(阪神)、石井裕也(日本ハム)ら、計8名のプロ野球選手を輩出。それなのに甲子園には出場していない。
その理由に本書は横浜の存在を挙げている。横浜創学館にとって横浜は天敵で、実に16連敗中だ。
東京都では東海大高輪台を挙げ、東海大関係校(付属校)などで野球部のある関係校は13校あるが、そのなかで東海大高輪台は唯一の甲子園未出場校。
この何とも気まずい状況を生み出しているのは、地価が高く土地も残っていない、都心にある高校のほとんどが直面する練習グラウンド問題、と本書は分析。
東海大高輪台には野球ができるグランドスペースがなく、土がなく狭い校庭で練習。練習試合は相手校に出向く、といった練習だったという。ところが、2004年に浦和に専用球場が完成。球児たちの練習環境は改善し、2008年夏、2017年夏に決勝進出を果たしている。悲願校からの卒業も近いかもしれない。
ほかにも、激戦区大坂の「知られざる強豪」大商大堺、帝京キラーの異名が付いた東京実、春しか出られない夏限定悲願校、OBプロ選手輩出は得意なつくば秀英など、数々の悲願校が登場し、さまざまな角度から分析することで、悲願校の悔しさがひしひしと伝わってくる。
今年の球児たちはどんなドラマを見せてくれるだろうか。本書を手元に地方大会や甲子園を観戦すれば、いつもとは違った新しいドラマが見えてくるはずだ。

<著者 田澤健一郎>

1975年生まれ、山形県出身。 高校時代は山形の強豪校、鶴岡東(当時は鶴商学園)で、ブルペン捕手と三塁コーチャーを務める。現在は編集兼ライターとして、野球以外でもさまざまな媒体で活躍中。マニアックな切り口の企画で特に力を発揮する。共著に『永遠の一球~甲子園優勝投手のその後』(河出書房新社)などがある。

書籍情報
「あと一歩!逃し続けた甲子園 47都道府県の悲願校・涙の物語」
発売中
著者
田澤健一郎
強力
「野球太郎」編集部
発行
KADOKAWA
定価
本体1,400円+税
発売日
2019年4月19日
発行元公式サイト
※この記事はauテレビでも掲載されました。
http://sp.tvez.jp/(スマートフォン向けサイトです)
この記事を書いた人
栗林 勝/編集者/1970年東京都生まれ。
専修大学英文科を卒業後、20年ほどアダルト・サブカル系出版社で、雑誌・書籍・ウェブ編集を経験。広く、浅く、安く、をモットーにうす〜く生きている。
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