<
©NHK

第一国立銀行の設立・経営から、ガスや電力、鉄道、製紙、ホテル、商工業事業、社会福祉事業や民間外交にも奮闘した渋沢栄一。晩年は家族の問題に悩みながらも徳川慶喜の伝記を編纂(へんさん)し、自分の人生の役割を最後まで模索していきます。そんな栄一を一年以上演じてきた吉沢亮さんに、物語後半から終盤にかけて登場した人物や、栄一と作品への思いなどをお聞きしました。
 
「栄一は世の中を良くすることが自分の一番の幸せだと本気で思っていた人」

――最終回では91歳まで演じるということですが、年齢を重ねる演技の難しさはありましたか?
「難しかったです。80~90歳近くなって年齢感を出そうと意識しすぎるとどうしても栄一の勢いが落ちてしまうので、演出の方と相談しながら演じました。声質のほか、話すスピードや体の動き、後ろを振り返るときに首だけでいかずに体全体を動かすなど、細かく歳を取っているという芝居を作ったのですが、第1回から続いている栄一のエネルギーを最後まで保つことを一番に考えていました」

 
――千代(橋本愛)亡き後、栄一を支えるパートナーになった兼子(大島優子)との関係性をどのように捉えていますか?
「お千代とは違った強さがあって、兼子さんも素敵でした。お千代は奥さんでありながらすごく母性を感じるので栄一が甘えたくなる存在、というか栄一はずっと甘えていたんですけど(笑)。逆に兼子さんは奥さんではあるけれど、プライベートの面も仕事の面でもパートナーとしてわりと対等な存在といえます。なんでも相談するし、いい意味であまりべたべたしていない良い距離感です。お千代と栄一、兼子と栄一はそれぞれ距離感がぜんぜん違いますが、それがまたいいなと思いました」


©NHK

 
――豪華なキャストがたくさん登場しましたが、刺激や芝居のぶつかり合いを感じたことはありますか?
「慶喜役の草彅(剛)さんはセリフの間をつめたり引っ張ったり、いきなり声を大きくしたりというような芝居のプランみたいなものがまったくわからないんです。本当にその場に慶喜としているだけなので、なにを考えているのかわからず、すごく不安になりました。でも草彅さんと芝居している瞬間でしか生まれないその緊張感があったからこそ、すごくいい方向に引っ張っていただいたと思います。同じ仕事をしている人間としてすごいと思うことばかりだったので、刺激をたくさんいただきました。また、僕は基本的に台本にそって芝居をするのですが、この人だからこそ生まれた化学反応でいうと、三野村利左衛門を演じたイッセー尾形さんとの芝居は本当に楽しかったです。三野村がコミカルで憎たらしくて(笑)、役というのはあそこまで広がるのかと、とても刺激を受けました。三野村は敵なのか味方なのかわからない、栄一としては警戒している人物なのですが、僕が三野村のことを好きすぎて、その愛が画面から出てしまったのではないかと思うほどでした(笑)」

 
――徳川家康(北大路欣也)が出てくることについてはどのように思いましたか?
「家康はもう最高です! 最初は登場の仕方に驚きましたし、家康の後ろで黒子のようなダンサーさんがいろいろな動きをしている演出も新鮮すぎて、視聴者の方にどのように受け止められるのだろうと思っていました。でも毎回、視聴者のみなさんも家康がいつ出てくるのか待っているところがありますよね(笑)。もちろん僕も待っています!」

 
――最後になりますが、今だから言えることはありますか?
「演じるうえで知らなかった人物を深く知ることができるというのもこの仕事の醍醐味だと思います。正直、演じる人物が渋沢栄一と聞かされたときは、お札になる人というくらいの認識しかありませんでした。でもそこから栄一について調べると、すばらしい功績を残していることを知り、さらに芝居をしていくと、どんどん栄一の見え方も変わっていきました」

 
「栄一の周りには時代を変えようとしたすごい人たちがたくさんいて、その人たちが時代の波にのまれていく瞬間や、なにかが生まれてなにかが終わっていく瞬間を栄一はずっと横で見てきました。ですから、栄一はいろいろな人にいろいろなものをいただいた人物なのだと思います。そして、栄一は世の中を良くすることが自分の一番の幸せだと本気で思っていた人なのだと思います。僕は、『青天を衝け』を通して、人は一面ではないんだと強く感じることができました。」

――ありがとうございました。
 


©NHK

 
大河ドラマ『青天を衝け』(番組公式ページ)

ログインする

詳細をお忘れですか?